WHOの調査(2014年)によれば平均寿命が84歳と世界有数の長寿国を維持し続けている日本。一方で、日常生活に制限がある「要介護」の期間をみると、男性が9.2年、女性が12.8年と海外と比べても長くなっている。
介護が必要となった主な原因として近年増加傾向にある「認知症」「骨折・転倒」に関して「歯の健康と関わりがある」との関係性があるとのこと。
健康な高齢者4,425名を対象に行った研究で「認知症」と「歯の健康」の関連性にがあると提議。「きちんと物がかめる」と見なされている歯の本数・20本を基準として、残っている歯の本数と義歯使用の有無を調査。その後、4年間かけて認知症を伴う要介護認定の状況を調べた。すると、歯が19本以下(義歯未使用)だった人は、歯が20本以上ある人と比べ、1.85倍も認知症になりやすいことが明らかになった。
このような結果が出た理由について、「かみ砕く能力の低下により、脳への刺激が少なくなること」や「かむ必要のある生野菜の摂取を避けてしまい、ビタミン類が欠乏すること」などがあると推測している。
また同様の手法で、過去1年間に転倒した経験のない65歳以上の高齢者1,763名を対象に「転倒」と「歯の健康」についても調査。調査開始から3年後、直近1年間に転倒した経験(2回以上)の有無を聞いたところ、歯が19本以下(義歯未使用)だった人は、歯が20本以上ある人に比べて2.5倍も転倒リスクが高いという結果が出た。
歯の本数が少ないと下あごが不安定になり、体のバランス機能が低下することが要因として考えられるという。歯の本数が0~8本の人は19~28本の人に比べて5.2倍骨折のリスクが高くなったという研究結果が出ていて、「歯の喪失と義歯の未使用が、要介護状態に陥る要因となっている」と述べられた。
基本的なデンタルケアを欠かさないことが、歯の健康、ひいては体全体の健康を保つ秘訣(ひけつ)といえるだろう。